meets

目黒・五反田エリアで活躍される方々と、MEGURO MARCのプロジェクト関係者の対談企画です。
働き方や暮らし、学びなど様々なテーマで議論を行っていきます。

目黒マルシェをブランド化して、 仮想空間でも開催してみたい。 世界中から来てもらえるように。

目黒マルシェ主宰 / ヤマモトタケシ氏 トレック / 山本曜子

MEETS MEGURO MARC #02

今回は、MEGURO MARCでエリアマネジメントの運営企画を担当しているトレックの山本曜子さんが聞き手役となり、目黒通りで行われるストリート・マルシェ「目黒マルシェ」を主催する目黒通りIIP(活き活きプロジェクト)/目黒マルシェのヤマモトタケシさんを迎え、目黒マルシェの活動や目黒エリアの魅力について、お話を伺いました。

山本:
今回、目黒の街で「目黒マルシェ」を開催されたり、ご自身のお店を営まれているヤマモトさんに、“暮らし”を一つのテーマにお話を伺えればと思います。
まずは「目黒マルシェ」についてお聞きしたいのですが、そもそもどんなきっかけで目黒マルシェを始めようと思われたのでしょうか。
ヤマモト:
お店の並びにある3店舗で、ゴールデンウィークに合わせて何かやりたいねって話したことがきっかけですね。5年くらい前にその3店舗からスタートしたらどんどん人が集まってくれて。そうしたら他のお店もやりたいって言ってくれて、2回目も開催することになりました。2回目の時は、確か20店舗くらいだったかな。そこからさらに広がって、コロナ禍になってしまう直前に開催した7回目の時は、参加店舗が160店舗まで増えていましたね。
山本:
5年で3店舗から160店舗まで増えたんですね。どうやってそれだけ広がっていったんでしょうか。
ヤマモト:
普通は出店できるスペースには限りがあると思うんですが、目黒マルシェの場合、会場が目黒通りというストリートなので、出店数に制限がないんです。それで応募してくれた人は受け入れるというスタンスでいたら、どんどん増えていきました。
山本:
なるほど。それは「ストリート・マルシェ」ならではの強みですね。マルシェ全体の運営はどのようにされているのでしょうか?
ヤマモト:
目黒通りIIPという実行委員会は作っているんですが、実質的には僕個人で運営しているような感じです。なので準備期間中は大変でしたね。1,2ヶ月くらい、ほとんど目黒マルシェにつきっきり状態でした。(笑)だけど、手伝ってくれる人がたくさんいたんです。インスタの運用は僕の友達にお願いしていて、写真もみんなが撮ってくれたものを集めてアップしてもらって。目黒マルシェの動画もあるんですが、それも友達に作ってもらいました。
山本:
すごい。色々な方が自発的に関わってくださっているんですね。私たちも施設の運営を手掛けている中で、どう関わってくれる人を周りに増やせるのかということが一つのテーマとしてあるのですが、ヤマモトさんはどのように取り組まれているのでしょうか。
ヤマモト:
目黒マルシェをやる上で一番大切にしているのが、「楽しい空気が満ち溢れてる道路(ストリート)を作る」ということなんです。
元々目黒マルシェには規約のようなものがなかったんです。大体、そういうものには「これはダメ」というような、ルールが多く書いてありますよね。それを見た時に、出店者さんが「あれもやっちゃダメなのかな」って思ってしまうこともあると思うんです。そうすると、マルシェ当日もどこかビクビクしながら来てしまうかもしれないなと思って。できれば目黒マルシェに来る時には元気な状態で来て欲しい。出店者さんが増えたこともあって、最近出店要項みたいなものも作ったんですが、なるべく楽しくなるような文章を書いたり、「盛り上げていきましょう」っていう雰囲気を伝えることを大事にしていますね。
でもそうやって緩さを作ると、その分何か予想していないことが起きる可能性もある。そこは、何かが起きても責任を取る覚悟をしないといけないと思っています。簡単に「あれもダメ、これもダメ」って決めてしまえば楽かもしれないけど、それをやっちゃうと面白くないじゃないですか。みんなが持ってる楽しいパワー、ワクワクを集めて、大きな“楽しい”空気の場を作る。そうすればイベントも成功するし、みんな楽しいと感じてくれるんじゃないかなって思っています。
山本:
もう少し目黒の街全体との関わりについてもお聞きしたいのですが、ヤマモトさんご自身は元々ファッションをやられていて、今も目黒通りにお店を構えられています。どんなところから「目黒通りを盛り上げたい」という思いが生まれたのでしょうか。
ヤマモト:
目黒通りは、15年くらい前にいわゆる家具ブームですごく盛り上がっていたことがあったんですね。僕はその当時まだお店を構えていなかったのですが、その時は通りに人があふれているような状態だったそうです。目黒通りの皆さんが、その時の盛り上がりをもう一回復活させたいと思っているんじゃないかということは、マルシェを始める前からなんとなく感じていました。 当時マルシェという言葉も馴染みつつある頃だったので、数軒だけでしたけど“マルシェ”っていう名前と、目黒っていう地名をつけたらそれなりになるかなと思ってスタートしたんですよね。ちょうど手作り作家さんが増え始めた時代だったので、そういう出店場所を探している人も多かったというのもあったと思います。
山本:
ヤマモトさんご自身と目黒の街はどんな縁があったのでしょうか?
ヤマモト:
目黒には長く住んでいて、ずっといい街だなと思っていました。目黒は、人がいいんです。優しい人が多くて。お店を始めた頃、軒先にラックを出して服を売っていた時があったんですが、知らない人が急にお店に入ってきて「雨降ってきたよ」って教えてくれたんですよ。植物の鉢が倒れていると、子どもたちがみんなで一生懸命直してくれたりして。どこか余裕があるというか、この街にいると自然と自分もそういう感じになれるんじゃないかなって思ったんですよね。
山本:
確かに通りを歩いていても、都心の中心部なのに肩肘を張る感じではなくて、穏やかさというか、居心地の良さを感じる気がしますね。
ヤマモト:
目黒にずっと住んでいた方からすると、目黒はどっちかっていうと下町っぽいイメージがあるそうですよ。人情味があるところっていう感じ。
山本:
そういうお節介みたいなことが残っているの、いいですよね。目黒マルシェのような取り組みをする上でも、地域の信頼関係みたいなものはとても重要になってきますよね。
ヤマモト:
目黒マルシェは、出店者も参加者も目黒の人たちが多いんです。そのおかげか、終わった後のゴミがすごく少ないんですよね。イベント後にゴミ拾いをするんですが、拾いがいがないくらいなくて。(笑)
きっと街の皆さんに、「ゴミがすごく残っていたり何かトラブルがあったら、イベントが続けられなくなってしまう。それは嫌だな」って思ってくれているところがあるんじゃないかなと思うんです。これまで大きな問題も起きずに続けられているというのも、この地域だからかもしれないですね。
山本:
目黒マルシェはすごく華々しさというか、勢いがあるように見えていたんですが、今日お話を伺って、もっと”人の体温”があるように感じました。もちろん華やかさはありつつも、より日常の延長にある風景を生み出しているイベントなんだなと思いましたね。
山本:
これまで目黒マルシェを5年続けて来られて、これからやりたいことはありますか
ヤマモト:
この数年間はコロナで開催できておらず、今年の春からまた再スタートするので、今はちょっとまた一からだな、という感じではあります。でもやりたいことはいろいろありますね。
例えば目黒マルシェをブランド化して、百貨店や色々なところに出張できたら良いなと思っているんです。それから、目黒マルシェに出ている人たちが販売できるような仕組みも作ってみたいですね。今は年に2回のみの開催なので、目黒マルシェではその時しかお客さんが購入できないんです。でも、それ以外の時にも購入できる機会が欲しいと言われることもあるので、そういうのを仮想空間でやれたら良いなと思っています。メタバース目黒マルシェみたいな。そうしたら世界中から訪れることができますしね。
山本:
メタバース目黒マルシェ!(笑)
ヤマモト:
でも恐らく、そう長くかからずに簡単にできるようになってくるんじゃないかなと思うんですよね。
山本:
目黒のまち全体がこんな感じになったら良いんじゃないかという考えや思いはありますか。
ヤマモト:
この通りに良いお店、面白いことをやろうっていう人たちが入ってきて、たくさん集まってくれるようになる、そういうストリートが作れたら良いなっていうのはありますね。
僕だけじゃなくて、そう思っているお店の人たちは多いと思うんです。目黒マルシェをやることで、この目黒通りがそういうポテンシャルのある通りなんだっていうことを色々な人に認知してもらえたらという思いはありますね。
山本:
コロナや様々な社会の変化を経て、まちが変わってきているという実感もありますか?
ヤマモト:
みんな、「今までとは違うやり方でやる必要がある」というように、意識は変わったと思います。でも、まだまだそれを自分たちだけで始めるのは大変だなという感じだと思うので、あとはその仕組みや流れに飛び乗るだけで良いっていう感じの状況を整えておいてあげられたらなと。例えば目黒マルシェでいうと、「ストリートを使うための許可を私がとりますので、そこで自分たちでイベントを考えて、好きに使ってください」というように整えておく、ということですね。そのことで、以前より皆さんが新しいことに取り組みやすい状況にはなってきたんじゃないかなと思いますね。
山本:
それぞれの人たちが、何か「これをやってみたい」と思った時に、「えい」って一歩踏み出せるみたいな。みんなが参加、挑戦しやすいということですよね。
ヤマモト:
そうですね。だからこそこれだけの人たちが協力してくれているというのもあると思います。
あとは、結構大人になると自分が「やりたい」って思ってることがやっちゃいけないこととされていることもあるじゃないですか。それも「チャレンジしてみていいんだな」って思ってもらえるようにすることはすごく大事にしていますね。だから通りでやる必要がある。色々な人が見て、体験して、「これでいいんだ」って思ってもらうことができるので。
山本:
今の日本にはそういう風景があまり多くない気がするので、そういう場面に出会えるだけでも豊かな気持ちになるというか、楽しくなりますよね。MEGRO MARCもご近所さんになるので、ぜひそういうことをご一緒できたら嬉しいです。
ヤマモト:
僕、目黒マルシェランドみたいなこともやりたいんですよね。MEGRO MARCの近くに「イーズ」さんという撮影スタジオがあって、そこは映画の街のセットのようになっているんです。ああいう場所でマルシェをやると、またストリートでやるマルシェとは違う楽しさがつくれそうだなと思っています。
山本:
色々な風景を一緒に作っていくことができたらとても面白そうですよね。これから楽しみにしています!

※このインタビューは2023年3月に行われました

ヤマモト タケシさん

ヤマモト タケシさん

目黒マルシェ主宰/ANALOG LIGHTING デザイナー
独学でファッションを学び、洋服のブランド「アナログ ライティング」を始める。2016年より活動を社会参加へ転換。地域活性イベント「目黒マルシェ」を始める。2020年より東京都荒川区インキュベーション施設「イデタチ」臨時メンター就任。2023年より環境 x ファッションのスタートアップ「WEA(ウエア)」を進めている。

山本曜子

山本 曜子

TREQ 代表取締役/Tone&Matter ディレクター/ミッカ 館長
立教大学 コミュニティ政策学科を卒業後、金融業界を経て、2015年よりプロジェクトデザイン会社Tone&Matterへ入社。事業企画からオペレーション構築まで様々な役割で新規プロジェクトに携わる。2018年に子ども図書館「絵と言葉のライブラリー ミッカ」を企画プロデュース。同年、公的空間を豊かにする運営会社TREQを立ち上げ、ライブラリー、ミュージアム、カフェなどの運営やコンサルティングの他、エリアデザインや子ども文化活動にも従事している。